支配者から見た中央銀行の役割

この項では、何とも交換する義務のないお金(不換紙幣)が世界中で使われている現代において、支配者から見た中央銀行の役割について論じます。

 

一般に、中央銀行には

 

①「発券銀行」

②「銀行の銀行」

③「政府の銀行」

 

の3つの機能があると言われています。

 

では、この3つから導き出される支配者から見た中央銀行の役割とはなんでしょうか?

 

私は、

(1)民間銀行の詐欺を完全犯罪にする役割

(2)銀行業界を支配し、経済全体を支配する役割

があると考えます。

 

順番に説明していきましょう。

(1)民間銀行の詐欺を完全犯罪にする役割

中央銀行は、「発券銀行」と「銀行の銀行」という機能によって、民間銀行の詐欺(手持ちのお金を遥かに上回る金額を利子付きで貸し出し、莫大な富を得る行為)を可能にしています。


本来、発券銀行ではない民間銀行が単独で所有しているお金より多くのお金を貸し出すことは不可能です。

 

この事実は、貨幣や紙幣といった現金の場合にはすぐ理解できることでしょう。

手元にある現金より多くのお金など貸せるはずがありませんからね。

 

また、少し混乱しやすいのは通帳上のお金の場合ですが、これもお金を貨幣や紙幣という現金で引き出す場面を想像すれば、簡単に不可能だと理解できます。

 

たとえば、銀行が手持ちの現金以上の金額をあなたの通帳に書きこんで、あなたに貸したとします。

 

そして、あなたが通帳上のお金を現金ですぐに引き出そうとしたらどうなるでしょうか?

 

もちろん、銀行はそんな額の現金を持っていませんから、手持ち以上のお金を貸そうとした詐欺を認め、潰れるしかありません。

 

つまり、銀行が単独で詐欺を続けることができるのは、あなたや他の利用者が銀行の手持ち以上のお金を現金で引き出さず、通帳上の数字の増減でお金の支払いと受け取りをしている間だけなのです。

 

では、単独ではなく、複数の銀行同士で現金を貸し借りを行う場合はどうでしょうか?どこかの銀行で現金が必要になったときに、急いで別の銀行から現金を借りるのです。そうすれば、単独の銀行でやるよりも詐欺を長く続けることができるかもしれません。


しかし、同時にたくさんの銀行で手持ち以上の現金が引き出されれば、銀行が潰れる可能性がまだあります。

 

そこで、登場するのが「発券銀行」かつ「銀行の銀行」である中央銀行です。

 

何とも交換する義務のないお金なら、中央銀行は同額の負債さえ自身の口座に計上すれば、いくらでも現金を発行できるのです。

 

したがって、民間銀行はたとえ全ての預金者から現金の全額引き出しを求められたとしても、中央銀行から無限に現金を供給してもらえば、絶対に潰れなくなったのです。

 

民間銀行と中央銀行が結託すれば、完全犯罪が可能になるというわけです。

 

もちろん、国によっては法律で通貨発行の上限が決められている場合もありますが、それでも全ての預金者が現金の全額引き出しを求めることは実際にはありませんから、中央銀行は民間銀行が詐欺を続行するのに十分すぎるお金を供給することが可能です。

 

なお、銀行が発行したお金と金や銀といった現物との交換が義務付けられていた時代は、中央銀行が発行できる現金の量に明確な上限がありました。近代国家が最初から現在のような制度に移行せず、銀本位制や金本位制を挟まざるを得なかった理由については、「通貨戦争」の項で論じます。

(2)銀行業界を支配し、政治経済を支配する役割

中央銀行の支配者は、「銀行の銀行」と「政府の銀行」という機能によって、自分たちの権益を侵しかねない他の銀行が台頭するのを阻止し、銀行業界、そして政治経済をも支配することができます。

 

これは、銀行家を戦国時代の武将に置き換えてみれば分かりやすいでしょう。

 

有力な銀行家たちが連合して中央銀行を創り、

連合に参加しない銀行家たちを支配下に置いたのは、

 

有力な武将たちが連合して天下をとり、

連合に参加しない武将たちを支配下に置いたのと同じ構造です。

 

「銀行が詐欺で莫大な利益を得ているなら、銀行が潰れることがあるのはおかしい」と思う方もいるかもしれませんが、時の権力者が敵視する銀行や自身の支配する銀行を何らかの理由で処分することは十分ありえることです。

 

「武家が武力で莫大な利益を得ているなら、武家が潰れることがあるのはおかしい」と考える人はいませんよね?時の天下人の都合で、いくらでも潰れることはありますし、一揆で滅ぶ場合だってありますよね?

 

そして、中央銀行が他の銀行を支配する方法は、武将が他の武将を支配するのより簡単です。

 

(1)で説明したように、民間銀行は中央銀行がお金を供給してくれるからこそ詐欺を続けることができます。


逆に考えると、中央銀行にお金の供給を断られてしまったら、詐欺に手を染めた民間銀行は潰れるしかありません。つまり、民間銀行を生かすも殺すも中央銀行の意のままということです。

 

もしも中央銀行に頼らない民間銀行があったとしても、それは詐欺を大規模に行っていないということで、詐欺を行っている多くの民間銀行に比べれば、たいしたことのない資金力しかなく、脅威ではありません。

 

それに、たとえ中央銀行に頼らない資金力豊かな民間銀行が現れたとしても、中央銀行の地位が揺るがないように既に手が打たれています。

 

それが「政府の銀行」という地位です。

 

結局、今のお金の仕組みや中央銀行の地位を支えているのは法律です。

そして、法律を決めることができるのは政治家です。

 

ですから、中央銀行の支配者は、民間銀行の詐欺によって手にした莫大な資金をもとに政治界の支配を強化し、自分たちの支配の仕組みを法律にしているのですが、もしも「政府の銀行」が中央銀行以外にも与えられていたら、政府との結びつきを持つ銀行家が増えかねません。そうしたわずかな隙さえ競争相手に与えないように現在の仕組みはできているのです。

 

そして、銀行業界さえ支配できてしまえば、政治経済の支配は簡単です。

 

なにせお金の供給を意のままに操れるわけですから、お金を借りない実力者には、お金を貸して強化した同業者と競争させたり、お金を貸さずに回収だけして、国や地域ごと経済危機に陥れることだってできます。

 

また、政治界にも絶大な影響力をもっていますから、政治家を使って競争相手を攻撃することだってできます。

 

さらには、武装集団をお金で手なずけて、武力で競争相手を抹殺することも可能です。

 

お金で動く人がいる限り、お金さえ支配してしまえば戦争だって何だって引き起こせるのです。

民間銀行=詐欺の実行犯、中央銀行=詐欺と支配の道具

以上から、支配者から見た中央銀行の役割は

 

(1)民間銀行の詐欺を完全犯罪にする役割

(2)銀行業界を支配し、経済全体を支配する役割

 

の2つだと考えるわけです。

 

ただし、ひとつ注意していただきたいのは、中央銀行そのものが詐欺の実行犯ではないという点です。

 

中央銀行に対して、中央銀行が銀行への貸出で莫大な利益を上げていることを批判したくなりますが、それは中央銀行の支配者が用意した罠だと思っています。

 

どういうことかというと、中央銀行は確かに莫大な利益をあげているのですが、私が知っている限り、その利益の大半は準備金として積み立てられるか、その中央銀行のある国の国庫に編入されることになっていて、一般人の知ることのできる法律の範囲内では、中央銀行を詐欺の実行犯として立証するのは困難だからです。

 

中央銀行は、銀行批判のなかで諸悪の根源とされがちですが、法律を調べると、中央銀行そのものが利益をため込むことは難しいのです。(例として、「日本の中央銀行」「アメリカの中央銀行」「イギリスの中央銀行」「EUの中央銀行」「ロシアの中央銀行」「支那の中央銀行」項をご覧ください)

 

もちろん、「利益=売上ー経費」と単純に考えたときに、経費として計上されているお金が国民の利益と照らし合わせて正しく使われているかどうかを厳しく検査する必要はありますが、中央銀行という組織に利益が残らない以上、「中央銀行は、無から生み出したお金を民間銀行に貸し付け、その利子で不当な財産を築いている!」という批判は的外れになってしまうわけです。

 

そこで、私は

 

「民間銀行=詐欺の実行犯、中央銀行=詐欺と支配の道具」

 

という認識で批判を展開すべきだと考えています。

 

まず、問題にすべきは、詐欺と支配の道具として利用されている中央銀行ではなく、それを利用して莫大な利益を得ている民間銀行とその支配者なのです。


(1)で説明したとおり、民間銀行は、中央銀行なしでは決済に対応できず、巨額の利益をあげることは不可能です。それにもかかわらず、稼いだ莫大なお金は全て自分のものにしてしまいます。

 

ですから、「民間銀行は、私的な利益をえるために、法律によって公的な任務が与えられている中央銀行を利用している!」と批判するべきなのです。

 

民間銀行の問題に対して、

 

「民間銀行は、中央銀行という公的な組織なしには成り立たないのだから、全て国有化して、売上のうち決められた割合は国庫に編入されるようにするべき」

 

というのが私の一貫した主張です。


全銀行国有化政策は銀行の売上を国庫に編入するだけにとどまらず、国の経済を1つにつなぎ、財政という概念を根本から書き換える革命的な政策です。

 

全銀行国有化政策の詳細については、「日本国債累積問題の解決」の項をご覧ください。

 

また、実は、世界各国の中央銀行を束ねる「中央銀行の銀行」が存在します。それについては、「各国の中央銀行を束ねる国際決済銀行BIS」の項で論じます。