日本の中央銀行 日本銀行

この項では、「民間銀行=詐欺の実行犯、中央銀行=詐欺と支配の道具」という認識で、日本の中央銀行である日本銀行について論じます。

日本銀行の理念

まずは、日本銀行の法的な理念からみていきましょう。

日本銀行法
(平成九年六月十八日法律第八十九号)
(通貨及び金融の調節の理念)
第二条  日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。

 

第二条にあるとおり、日本銀行の究極的な目標は国民経済の健全な発展です

 

ところが、日本銀行がいくら物価の安定を図ったとしても、民間銀行を野放しにしていては、貧富の差は拡大するばかりで、国民経済の健全な発展は望めません。

 

よって、日本銀行の理念にのっとれば、これを妨げる民間銀行の詐欺を許してはいけないはずです。

 

民間銀行の詐欺と支配の道具として利用されている中央銀行ですが、本来、中央銀行は国民の味方になるべき存在なのです。

日本銀行への出資者が直接儲けることはできない

次に、日本銀行への出資者が直接儲けることはできないということを説明します。

 

「日本銀行の株式を持っているヤツがぼろ儲けしている」

という説がありますが、これは法的には間違いです。


(資本金)
第八条  日本銀行の資本金は、政府及び政府以外の者からの出資による一億円とする
2  前項の日本銀行の資本金のうち政府からの出資の額は、五千五百万円を下回ってはならない

 (出資証券)
第九条  日本銀行は、前条第一項の出資に対し、出資証券を発行する。
2  前項の出資証券その他出資に関し必要な事項は、政令で定める。

 

第八条にあるとおり、日本銀行の全資本金は1億円で、そのうち少なくとも5千500万円は政府が払っています。そして、残りの資本金は民間部門が払っているわけです。

 

また、第九条により、出資者には出資証券を発行することになっていますから、その証券は市場で取引され、だれでも購入することができます。気になるのはその配当率ですが、それは第五十三条の4項によって、出資金の5%以下と定められています。

 

(剰余金の処分)

第五十三条  

4  日本銀行は、財務大臣の認可を受けて、その出資者に対し、各事業年度の損益計算上の剰余金の配当をすることができる。ただし、払込出資金額に対する当該剰余金の配当の率は、年百分の五の割合を超えてはならない

 

つまり、仮に最大4500万円分の出資証券を保有して、その配当率が最大の5%だったとしても、225万円しか手に入らないのです。

 

加えて、出資証券の額面価格と市場で取引される時価は異なり、1株100円の額面のものが100株セットで500万円前後で取引されています。そうすると、500万円だして500円の配当を得るようなもので、世界を支配できるような儲けには全くなりません

 

また、日本銀行には、株主総会に相当する出資者総会は存在せず、出資者に決議権の行使が認められていません

 

ちなみに、日本銀行が解散したとしても、出資金と特別準備金の合計額までしか残余財産は分配されませんから、日本銀行が解散したときに日本銀行の財産がごっそり手に入るわけでもありません。

 

(解散)
第六十条  日本銀行の解散については、別に法律で定める。
2  日本銀行が解散した場合において、その残余財産の額が払込資本金額を超えるときは、その超える部分の額に相当する残余財産は、国庫に帰属する

 附 則 抄
第二十二条  日本銀行法の一部を改正する法律(昭和二十二年法律第四十六号)附則第五項及び第六項の規定により積み立てられた特別準備金の取扱いについては、なお従前の例による。
  日本銀行が解散した場合において、前項に規定する特別準備金の残高があるときは、新法第六十条第二項の規定にかかわらず、払込資本金額及び当該特別準備金の金額の合計額を超える部分の額に相当する残余財産に限り、国庫に帰属するものとする

(「特別準備金」とは、戦後の金融機関再建整備促進のため、大蔵大臣命令により他の金融機関とと もに昭和20年上期から昭和24年上期までの間支払停止した配当金の相当額を日本銀行法の一部を改 正する等の法律(昭和22年法律第46号)附則の規定により積み立てた準備金です。出典はここ

 

ですから、日本銀行への出資者がぼろ儲けできるわけではないのです。

 

上で説明した日本銀行への出資については、日本銀行のFAQで説明されています

日本銀行は詐欺と支配の道具であって、その実行犯ではない

さらに、「日本銀行が莫大なお金をため込み、支配のために流用しているのではないか?」という疑いも晴らしておきましょう。

 

(剰余金の処分)
第五十三条  日本銀行は、各事業年度の損益計算上剰余金を生じたときは、当該剰余金の額の百分の五に相当する金額を、準備金として積み立てなければならない
2  日本銀行は、特に必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、財務大臣の認可を受けて、同項の剰余金の額のうち同項の規定により積み立てなければならないとされる額を超える金額を、同項の準備金として積み立てることができる。
3  前二項の規定により積み立てられた準備金は、日本銀行において生じた損失の補てん又は次項の規定による配当に充てる場合を除いては、取り崩してはならない。
4  日本銀行は、財務大臣の認可を受けて、その出資者に対し、各事業年度の損益計算上の剰余金の配当をすることができる。ただし、払込出資金額に対する当該剰余金の配当の率は、年百分の五の割合を超えてはならない
5  日本銀行は、各事業年度の損益計算上の剰余金の額から、第一項又は第二項の規定により積み立てた金額及び前項の規定による配当の金額の合計額を控除した残額を、当該各事業年度終了後二月以内に、国庫に納付しなければならない。
6  政府は、前項の規定による各事業年度に係る国庫納付金の一部を、政令で定めるところにより、当該各事業年度中において概算で納付させることができる。
7  第五項の規定による納付金の額は、法人税法 (昭和四十年法律第三十四号)の規定による所得及び地方税法 (昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による事業税に係る所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
8  前三項に定めるもののほか、第五項の規定による納付金に関し必要な事項は、政令で定める。
9  第七条第四項の規定は、第二項及び第四項の認可について準用する。


第五十三条5項にあるとおり、毎年、日本銀行は余剰金から準備金と配当を除いた残額を国庫に納付することになっています。


そして、同条3項にあるとおり、準備金は日本銀行において生じた損失の補てんか配当に充てることしかできません


さらに、配当は前に説明したとおり、微々たるものに過ぎません


したがって、日本銀行という組織が莫大な利益をため込んで、支配のために流用することはできません


これが、「日本銀行は詐欺と支配の道具であって、その実行犯ではない」とする理由です。

大きな通貨発行益は存在しない

また、「お金の額面上の価値と製造原価の差額=通貨発行益」を日本銀行が得ているのではないか?と疑ったこともありましたが、日本銀行が発行した日本銀行券(紙幣)は、日本銀行にとっては負債として計上されるものなので、日本銀行は通貨発行益を得ることはできません。

 

これには、法的根拠があるわけではありませんが、日本銀行券を金との引換券として発行していた時代の考え方を引き継いで、日本銀行が日本銀行券を発行するたびに負債として計上しているようです。

 

それに、仮に通貨発行益があったとしても、その利益は剰余金として国庫に納付されますから、やはり日本銀行が詐欺の実行犯にはなりえません

 

また、「紙幣を刷っている国立印刷局が通貨発行益を得ているのでは?」とも疑いましたが、国立印刷局の財務諸表や決算報告書を見る限り、従業員数約4200人の組織としては1人当たりの給料も妥当な水準ですし、なにより国立印刷局は独立行政法人ですから、余った積立金は基本的に国庫に納付しなければなりません

 

独立行政法人国立印刷局法
(平成十四年五月十日法律第四十一号)

(積立金の処分)
第十五条  印刷局は、毎事業年度、通則法第四十四条第一項 本文又は第二項 の規定による整理(以下この項において「整理」という。)を行った後、同条第一項 の規定による積立金(以下この条において「積立金」という。)がある場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、当該各号に定める金額について財務省令で定める基準により計算した額を国庫に納付しなければならない
一  当該事業年度(以下この項及び次項において「対象事業年度」という。)の直前の事業年度(次号において「前事業年度」という。)に係る整理を行った後積立金がなかったとき 対象事業年度に係る整理を行った後の積立金の額に相当する金額
二  前事業年度に係る整理を行った後積立金があった場合であって、対象事業年度に係る整理を行った後の積立金の額に相当する金額が前事業年度に係る整理を行った後の積立金の額(当該前事業年度において、この項の規定により国庫に納付した場合にあってはその納付した額を、次項の規定により財務大臣の承認を受けた金額がある場合にあってはその承認を受けた金額に相当する額を、それぞれ控除した残額)に相当する金額を超えるとき その超える額に相当する金額
2  印刷局は、前項各号列記以外の部分に規定する場合において、積立金の額に相当する金額から同項の規定により国庫に納付しなければならない額に相当する金額を控除してなお残余があるときは、その残余の額に相当する金額のうち財務大臣の承認を受けた金額を、対象事業年度の次の事業年度に係る通則法第三十五条の十第一項 の認可を受けた事業計画(同項 後段の規定による変更の認可を受けたときは、その変更後のもの)の定めるところにより、当該次の事業年度における第十一条に規定する業務の財源に充てることができる。
3  前二項に定めるもののほか、納付金の納付の手続その他積立金の処分に関し必要な事項は、政令で定める。


ということで、国立印刷局にも国を支配するような大きな通貨発行益は存在しません。

 

通貨発行益があるとするならば、紙幣がある限り絶対に潰れない国立印刷局という独立行政法人の従業員の給与や、関係業者の売り上げぐらいのものです。

 

これらが不当に高すぎる可能性はあっても、国を支配するほどの額でないのは明白です。

 

それに、平成26年事業年度の例でいいますと、国立印刷局は売上総利益約149億円に対し、約81億円の当期純利益を出しています。(財務諸表4Pを参照)

 

もしも国立印刷局を支配のための資金源とするのであれば、経費としてよりたくさんのお金を支出したいと思うはずです。本当に支配の資金源としたいなら、純利益はギリギリまで縮小するように経費を使い込むべきです。

 

しかし、81億円も余らせているというのは、やはり「通貨発行益で国を支配しているわけではない」というひとつの証拠になると思います。

日本銀行の経費で国を支配しているとは思えない

それでは、国立印刷局よりも収益をあげている日本銀行の経費を使って国を支配しているのでしょうか?

 

それも、平成25年度を例として考えてみると、考えにくいことです。

 

日本銀行の平成25年度の財務諸表4Pを見ると、

 

経常収支が約1兆5793億円の黒字に対して、

経常費用は約2987億円です。

 

これにより、経常利益は約1兆2805億円となり、そこから特別利益、特別損失、法人税、住民税、事業税を勘定して残った約7242億円は当期剰余金として計上されています。

そして、その剰余金約7242億円のうち約5794億円は国庫に納付されています。(同資料14スライド目の剰余金処分表を参照)

日本銀行の収益から支配のためのお金を捻出しているのならば、もっと経費を使い込んでもよさそうなものです。


しかし、実際は、1兆5793億円の収益に対して1兆2805億円も余らせて、そこから税金まで払い、法定準備金を積み立て、最後には約5793億円を国庫に納付しています。


これはやはり、日本銀行の収益が人々の支配のために使われているわけではない証拠といえるでしょう。


「一年度分だけでは分からない」と思う方は他の年度を調べてみてください。きっと同じような結果になるでしょう。


なぜなら、支配というのは継続的に行わなければならないものですから、平成25年度だけ例外のような結果にはならないはずだからです。

支配の道具としての日本銀行

以上から、日本銀行は詐欺の実行犯ではないということが分かっていただけたと思います。


日本銀行がどうやって民間銀行による詐欺を支えているのかは「民間銀行が行っている詐欺」の項で説明しましたから、ここでは最後に支配の道具としての日本銀行について、もう少し具体的に説明しましょう。

 

まず、支配の方針を説明します。

 

現在の日本の支配者たちからみると、すでにゲームの主導権を握り、かなり優勢になっている状態です。

 

ですから、支配者たちは下手に大きな勝負をして優勢を一気に拡大する必要などなく、ゲームの優勢をそのまま維持するか、じわじわと優勢を拡大すればいいだけのこととです。

 

したがって、自分たちの支配が直接及ぶ企業が全体から見て優位にある状態を維持すればいいのです。

 

銀行に関して言えば、大銀行にとって有利になるような制度や評価基準を設定すればいいのです。そうすれば、自分たちの息のかかっていない中小の銀行の台頭を防げます。

 

さて、この方針に沿ってどのような具体策がとられていたかというと、第二次大戦後から1991年のバブル崩壊までは、大蔵省の行政指導であり、日本銀行の窓口指導でした。どちらも民間銀行の貸出量を制御する方法です。

 

窓口指導は1991年で終了したとされていますが、その理由はおそらくBIS規制の登場にあると思います。(BISとはBank for International Settlements = 国際決済銀行のこと。詳しくは「各国の中央銀行を束ねる国際決済銀行BIS」の項をご覧ください)

 

BIS規制は1988年7月に発表され日本では1992年末から適用されるようになりましたが、それはおそらく日本のバブル崩壊の時期を想定していたのでしょう。

 

「1991年から1992年末までの間で新しい制度に適応しろ」という支配者たちからの命令のように思えます。

 

BIS規制の意味を簡単に表すと、


銀行を続けたければ身の丈に合った無難な融資をしろ」ということです。


式で表すと、


自己資本比率 = 自己資本 / リスクアセット ≧ X %


を守れという規制で、Xは条件によって変化します。


自己資本=誰にも返済する義務のない資産


リスクアセット=所有資産の危険度


ですから、自己資本に見合わない規模の融資はしにくくなり、危険と判断されがちな中小企業への融資は審査が一層厳しくなりました。


BIS規制において日本銀行が果たす役割は、


日本銀行に依存している日本の全民間銀行にBIS規制を受け入れさせ、


融資の内容を定期的に考査し、BIS規制を順守させることにあります。

 

BIS規制は、経済の安定をもたらし、私たちのためにもなるように見えます。

 

しかし、見方を変えれば、経済の安定とは序列の固定化を意味します

 

実際、バブル崩壊以降、銀行の統合が加速し、都市銀行では3大メガバンクと言われる三菱東京UFJフィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループに預金が集中するようになりました。

 

銀行の統合は日本だけでなく、中央銀行が国際決済銀行BISに加盟している世界の主要な国で進みました。

 

それは、BIS規制によって身の丈にあった手堅い投資を求められ、はじめから力がある大銀行に有利な条件が作られたからです。

 

こうしてBIS規制は銀行間での序列を固定する役割を果たしているのです。

 

そして、大銀行が好んで融資するのは資金の返済が見込める大企業になりがちですから、銀行以外の業種でも現在の秩序が保たれるわけです。

 

もちろん、そうした状況でも新興勢力が登場する場合はありますが、そういうときは、その新興勢力を仲間に引き入れるか、支配している組織を使って叩き潰すまでです。

 

結局、民間銀行の支配者は、信用創造による詐欺さえ続けられれば莫大な富を手に入れることができて、銀行間の序列さえ固定できれば、支配体制は盤石です。


このように、中央銀行である日本銀行は、社会の序列を固定する支配の道具なのです。