1980年から2012年までの日本の名目GDPと実質GDPの推移をグラフ1に表した。(2012年分は推定値)
グラフ1 (注1)
グラフ1から分かるように、1980年から1991年にかけて名目GDP・実質GDPともに急激に成長し、1991年から2012年までは成長率が低下しているのが分かる。この低成長期間が俗に「失われた20年」といわれている期間である。名目GDPは1997年に523兆1983億円で最大となり、それ以降は減少局面と増加局面を繰り返し、増加局面にあった2007年には512兆9752億円となり、1998年の512億4386億円を若干上回る水準にまで回復していた。しかし、2008年9月のリーマンショックの影響を受けて、名目GDPは2009年には471兆1386億円まで減少してしまった。これは1991年の476兆4309億8千万円よりも少ない。2010年は若干増加して481兆7845億円となったが、翌年2011年は東北大震災の影響で468兆1911億円まで減少し、過去20年間で最小だ。2012年は被災地域の復興需要があったためか、名目GDPは474兆5586億4千万円へと増加したが、この水準は前述の1991年のものよりも低い。このように名目GDPでみれば、1991年よりも20年後の2011年のほうが低水準にあるのだ。
実質GDPではなく名目GDPを気にする理由は税収と債務である。グラフ2は1980年から2012年までの日本のGDPデフレーターと平均消費者物価指数をパーセンテージで表したものである。(2012年分は推定値)
グラフ2 (注1)
GDPデフレーターの値が100より大きければインフレ、小さければデフレと言える。1980年から1985年まではインフレに向かっているとはいえ、GDPデフレーターの値は100を下回っている。1985年の値は99.275だ。1985年以降は1987年をのぞいて1994年までインフレに進んでいる。その後、GDPデフレーターの値は1997年の110.959から1996年の109.541へ僅かに減少したあと、1997年には110.193へ微増する。そして、1998年以降は2012年まで一気にデフレへと突き進んでいる。GDPデフレーターの値が100を下回ったのは2005年の98.875からだ。このデータは1997年から何らかの理由でデフレへと向かい、その傾向は現在まで続いているということを示している。1997年はグラフ1で見たように、1980年から2012年の間で日本の名目GDPが最も高かった年である。
一方、平均消費者物価指数が1980年から2012年までどのように推移してきたかを見てみる。平均消費者物価指数は、1994年の101.232から1995年の101.105にかけての僅かばかりの低下を除いて、1980年の77.163から1998年の103.707までは上昇し続けたが、その後は2005年の100.414まで低下し続けた。しかし、2005年から2008年の102.105にかけて上昇し、そこから2011年の99.721まで再び低下した。そして、2012年は99.763へ若干上昇すると推定されている。
つまり、1980年から1998年まではGDPデフレーターに対して平均消費者物価指数はおおむね並行移動をしていたが、1998年以降はGDPデフレーターが大幅に低下しているにもかかわらず、消費者物価指数の低下率はGDPデフレーターのそれよりも小さく、2005年から2008年にかけてはGDPデフレーターの低下と平均消費者物価指数の上昇が起きている。
1991年と比べて2011年の名目GDPが若干低いだけでなく、1997年から現在までの連続したGDPデフレーターの低下にも拘らず、消費者平均物価指数は高止まりしている。つまり、日本国民の給料の額面が減る一方で、物価は給料ほどの割合で下がっていないのだ。まさに「失われた20年」というわけだ。
注釈
(注1)出典:International Monetary Fund, World Economic and Financial Surveys, World Economic Outlook Databaseより作成。
(2013年1月15日閲覧)