2011年の日本のGDPは名目値で見ると20年前よりも低い水準にある。また、日本のGDPデフレーターは1998年を境には低下の一途を辿っているが、物価の低下はそれより鈍く、人々の給料が減っても物価が高止まりしているという苦しい経済状態が続いている。
さらに、1993年以降は政府の歳入が歳出を上回る年は無く、大きく下回る年がほとんどになった。歳出が歳入を上回った分は主に国債の発行で埋め合わせてきたが、国債には3つの大きな問題がある。
1つ目は、銀行が人々の預金と預金準備率制度を根拠に無からお金を創造し、そのお金で国債を購入するため、銀行の所有者は労せずして莫大な利益を得ることだ。
2つ目は、国債の価格や金利が為替や物価の影響を受けて変動するため、国債は資産としての安定性に欠け、激しいインフレが起きた場合は、既発国債の価格の低下と新規国債の金利の上昇が起き、資産としての国債の減価と住宅ローン金利の高騰などが誘発され、結果として企業の連鎖倒産および個人の自己破産が続発する大不況を引き起こしかねないことだ。
3つ目は、増税を行って税金で国債を償還すると、またしても銀行の所有者が喜ぶだけでなく、大きな信用収縮が起き、今以上のデフレ不況が発生することだ。こうした理由から政府は国債を発行し続け、銀行がそれを買い続けているが、この状態は2つ目の理由で述べたような危険を常に孕んでおり、できるだけ早く国債残高問題を解決する必要がある。その解決策は三章で詳しく述べる。
また、歳出に見合った歳入を得るだけの税収を獲得しようと思えば、法人所得と所得を増加させるべきである。それは、政府が財政政策で企業の資産を実体経済に基づいた形で増加させ、法人所得と所得と消費が増加すれば自然に達成される。財政政策のための財源は税収が歳出に追い付くまで貨幣発行権の活用で賄える。このことについても三章で詳しく論じる。
なお、先に挙げた国債が抱える3つの問題から、とんでもない額の増税を試みてその国債を償還しようと考えるのは誤りである。国債の償還を果たしても、待っているのはより大きなデフレ不況か再度の国債発行だ。
以上のことに加えて、国債価格下落と国債金利上昇がなければ銀行は信用創造を繰り返して無限に国債を購入できるし、そもそも政府は貨幣発行権をもっているのだから、日本は財政危機ではなく、国債価格暴落と国債金利高騰によって引き起こされる一大不況の潜在的危険に晒されていると言うべきだ。
二章:問題の根底にあるものはなにか?